朝、キスして。


その声は、来た道を眺めていた私の後ろからして……。

つまり、クラスメイトが進んで行った道の方から。


振り返ると、瞬が引き返してきていた。


前を歩いていたはずの瞬が……どうして?


「先生がしんどそうだから休憩中」

「大丈夫ですか?」


瞬は先生の傍にしゃがんで声をかけた。


「はい……っ、ありがとうございます……。すこし、やすめば……、歩けます……」

「後ろが騒がしかったから何かあったのかと思ったけど」


それだけでわざわざ戻ってきたんだ……。

こういうところが人たらしの所以なのかな。


すると、立ち上がった瞬が今度は私を見た。


「有咲は?大丈夫?」

「えっ、私?……大丈夫だけど」

「そ。ならよかった」

「?」


そうこうしているうちに、後ろから次のクラスがやって来た。

みんな驚きと笑いをこぼしながら通り過ぎていく。


休憩中の先生の横に立つ4人の渡辺。

気分は、屍を守る騎士。

注目を浴びるみたいでちょっと恥ずかしいけど。