朝、キスして。


たぶん、有咲の気持ちを誰よりも理解して寄り添えるのは瞬なんだ。


それが悔しかった。

恋人として隣にいれなくても、真っ先に顔が浮かぶ話し相手になってあげられたら……。


「有咲の悩みはそういうことだよ」


結局、もったいつけるようなヒントだけを残して立ち去った。


俺は今、自分の気持ちを持て余している。

風化を待っていたはずなのに、予想とは裏腹にどんどん溢れてくる。


そして──。



「そういや優雨って、俺ん家の近くに住んでるんだよな?行ったことある?」


席がえが終わった直後の休み時間。

俺は有咲と隣に、瞬は優雨と隣の席になってしまった。


ただでさえ有咲は辛いはず。

なのに聞こえてくる吉田と瞬、優雨の会話。


誘われるように振り返った有咲のひどく傷ついた顔を見た瞬間、俺を抑える感情がなくなった。


教室を出ていった有咲を追いかけて引きとめた。



「俺、今の有咲につけ込んでいい?」



*ハルSide End*