朝、キスして。


「言えないんじゃなくて言いたくないんだよ、有咲は」

「わかってるよ」

「なら」

「でもさ、有咲がハルに言えて俺には言えないことって……俺のことだろ?有咲の悩みの種になってんのに本人が知らないっておかしいだろ」


瞬は察しがいい。


だけどこの場合、察しどうこうじゃなくて。

“有咲の性格を理解している”

と言ったほうが正しい。


それも理解してる気になってるわけじゃなくて、本当に理解している。


だけど……。


「瞬は『好きになっちゃったもんはしょうがない』って本気で思ってる?」

「?」

「前に有咲にそう言ったんだろ?」

「あー……、有咲にっていうか……うんまあ、言った。思ってるよ」


なら、瞬は有咲の気持ちがわからないかもな。


考えてもしょうがないことを「しょうがない」で済ませられなくて悩んでいる。

有咲の気持ちがわからないなら、知ったところで解決に至らない。


やっぱり俺の口からは教えられ──


「思ってるけど、なんていうかそれは最終的な結論であって、諦めなんだよ」