朝、キスして。


有咲のため息を偶然、盗み聞いてしまった。


なんのため息かは、まあすぐに察した。

直前に瞬に振り回される有咲を見ていたから。


だから訊いてみた。

『瞬のことどう思ってんの?』って。


『ただの幼なじみだよ』と有咲は答えたが、それならもっと返答が早くてもいい。

答えるまでに間があった時点で“ただの”じゃないことは明白だった。


そのすぐあとのことだ。

有咲の元カレの輝がやってきて、俺がいるのに気づかないまま話を始めた。


元恋人同士の話に関係ない俺が口を挟んでも……と思って黙って聞いていたが、本当に好きだったのか?と疑いたくなるほど元恋人を汚く罵る輝に、さすがに耐えられなくなって。


立ち上がろうとしたとき、


『だったらなに?もう輝くんには関係ないよね?』


有咲が負けじと抵抗した。


単純に「すげぇな」って思った。

なんとなく気弱な印象を持っていたから、どこに強さを隠していたんだろうって。