朝、キスして。


もちろん寝ているうちにするわけじゃなくて(寝込みを襲ってるみたいになっちゃうから)。

起きてから交わす──いわば「おはよう」のようなもの。


特別な「おはよう」は幸せな朝の始まり。


……なのに、今日はもの足りない。

まだ満たされていない感じ。

もっと言うと、たぶん何をしても満たされない感じ。


「有咲、昨日──」

「瞬はさ」


瞬が何かを言おうとして、遮るように言葉を挟んだ。


「え?ん、なに?」

「瞬は私と、キス以上のことしたい?」


世間話をするように訊いてみた。


朝からする内容じゃないし、世間話でこんな話されたらたまったもんじゃないけれど、今の私にはどうでもいいこと。

だって……。


「ん!?どうした急に」

「ちょっと訊いてみたくなっただけ」

「うーん……まあ、そりゃしたいけど……」


わかりきった答えを聞きたいわけじゃない。


「じゃあ、しよっか」


誘い文句なんか1つも知らない私でも誘い出せる、そのためだけに誘導した。

ずるくて賢くて、まるで女狐。