楽しいことを考えよう。
そうだなぁ……あれ面白かったな、2人して傘パクられたの。
結局、どっちの傘も戻ってこなくて、一緒に新しい傘を買いにいったんだよね。
それから、言い訳も考えないと。
どうして下駄箱にいるのか。
……そうだ。
“瞬が待ってるの忘れて、そのまま帰るところだったよ”
って冗談っぽく言うのは?
荷物が教室にあるのに、ちょっと苦しいかな。
でも、瞬なら笑って「忘れるなよ!」ってツッコんでくれる。
よし、笑う準備をしておこう。
瞬を待つ時間が刹那にも永遠にも感じた。
楽しいことを考えて心を保つ。
このあとどうやって振る舞うかイメージして、いつもの渡辺有咲を作る。
そうやって待った時間は──しかし。
「有咲」
「……っ」
瞬の顔を見た瞬間、無駄になった。



