「なんで?何もないよ」

『なんか声が変……』

「電話だからじゃない?」

『今どこにいんの?』

「下駄箱だけど……」

『わかった。有咲の荷物持ってすぐ行くから待ってて』


え……、待っててって……。

ガタッと椅子を引く音が聞こえたあと、電話が切れた。


私しかいない昇降口。急にシーンと静まり返った。

遠くの方に生活音はあるけれど、遠くに雑音があるからこそ余計に侘しく感じる。


静寂。


なぜ静かな空間は、自分の心を向き合わせてくるのだろう。

何も考えたくないのに考えてしまう。


考えたくないことは考えない。

だから私は、どうやって瞬を待つか考えることにした。


まずは立たないと。

座ったままだったらおかしいもんね。


うまく足に力が入らないけどなんとか力を振り絞って、下駄箱に寄りかかる。