なるべくいつも通りに。
声が震えないように。
「はい」
『先生の手伝い終わった?まだかかりそうなら俺もそっち行くよ』
何も変わらない、いつもの声のトーンで瞬が言った。
それだけで涙が出そうになるのをぐっとこらえて……。
「頼まれ事はもう終わった。……瞬は、いま、ひとり?」
『1人だよ。それがさ!有咲を待ってる間、一応テスト勉強しようと思ったんだけど気づいたら寝てて……起きたら誰もいねぇの。がっつり寝てたみたい』
「そうなんだ」
瞬は何も知らない。
それなら、私も何も見なかったことにしないと……。
「じゃあ今からそっちに──」
『有咲?なんかあった?』
私の言葉を遮るように瞬が口を挟んだ。
それも、「起きたら誰もいない」と言ったときの軽い口調ではなく、声の調子を落として真剣に……。
まるで心配するみたいに。