「あーもうっ!わかりにくい!」
吉田くんが痺れを切らして叫んだ。
「よし!渡辺禁止令を発令しよう」
「なにそれ」
「渡辺4人のことは“渡辺”以外の名前で呼ぶこと!」
「山田とかってこと?」
意味不明な提案に真顔で聞き返した森下さん。
すかさず吉田くんがツッコミに回る。
「そうじゃねぇよ!なんだよ山田って。……じゃなくて、あだ名とか下の名前とかさ」
「いいね、それ。な、有咲?」
その案に真っ先に乗ったのは瞬だった。
にくったらしい笑みを口元に浮かべ、わざとらしく“有咲”と呼ぶ。
違う。案に乗ったわけじゃない。
瞬はただ、堂々と“有咲”と呼べる口実が欲しいだけ。
私に下の名前で呼ぶなと言われたのが気に食わなかったらしい。
「瞬に有咲。晴臣と……優雨、だっけ?晴臣はハルって呼ばれてるよな。優雨さんは普段なんて呼ばれてるの?」
「優雨が多いかな。特にあだ名はない」



