「……は?」


瞬から漏れる怪訝な声を無視して続ける。


「だって、もし本当にストーカーだったら危ないじゃん。それで諦めてくれるかわからないけどさ、1人より嘘でも誰か頼れる人がいた方がいいでしょ」


知らず知らずのうちに早口になっていた。

間違ったことは言っていない。

そう思うことでしか、自分を保てない。


「マジで言ってんの?」

「マジで言ってるよ。優雨ちゃんが心配だから」


心が縛りつけられたみたいにズキンと痛む。


瞬の顔が見れなかった。

声のトーンから明らかに怒っているのがわかったけれど、一度出てしまった嘘の正義を今さら取り消せない。


優雨ちゃんは事の成り行きを見守るみたいに黙っていて、瞬は反論を呑み込むみたいに口を噤む。

周りは賑わっているのに、ここだけ時が止まったように静か。


だけど、その沈黙は時間にしてみればわずかだったと思う。


ぐっと握り拳を作ったあと私は、

「トイレ行ってくるね」と言って立ち上がった。


沈黙を破りたかったんじゃない。

一刻も早く、その場から逃げ去りたかった。