朝、キスして。


ほぼ考えるまでもなく、気づけば問題3の1の答えを読み上げている私。

教科書を立てて顔を隠し、限りある低音ボイスを振り絞って……瞬に見せかける。


カタカナ英語だろうと、教室中がザワザワクスクスし始めてもお構いなし。


とりあえず最後まで読みきった。

……とりあえず、ね。


「おーい。おまえは渡辺瞬か?」


バレないわけがなかった。


まるで読み終わるのを待っていたかのように、冷笑をこぼしながら先生が言う。

瞬間、教室がどっと笑いに包まれた。


「あははは!」

「有咲ってそういうことするタイプ?」

「似てねぇー」

「もっかいやって」


恥の集中砲火!

とにかく恥ずかしすぎて、顔がぼっと熱くなる。

途中で気づいてたなら止めてよー……。


「……っ、ん?」


笑い声に誘われて、ようやく瞬がお目覚め。


「渡辺有咲と瞬は、あとで職員室に来い」

「え、なんで?」


“なんで?”はこっちのセリフ……!

思わず、振り向いてまで睨んでしまった。


「……?」


助けるんじゃなかった。

今さら後悔しても遅いけど!