「えぇでは、次の問題3の1を……」
授業は、今年で教師歴30年の先生による英語。
何かを語るとき、「30年も先生をやっているとなぁ……」と前置きするようになった男の先生。
聞き取りやすい声で、時には無駄話を挟んだりと受けやすい授業ではある。
ただ、生徒を当てるとき、ランダムで当ててくるからいつだって気が抜けない。
……後ろの奴は、気を抜くどころか寝てますが。
「渡辺瞬」
「!?」
問題3は穴埋めの設問。
空欄に適切な英単語を埋めて、一文を完成させるというもので……。
何十人も生徒がいて、先生がピンポイントで当てたのは瞬だった。
「……」
刹那の沈黙。
瞬を起こそうにも、当てられた時点で起こすとなると寝ていたのがバレバレ。
だからといって、このまま見過ごすこともできず。
なんで当てられてもいない私がハラハラしないといけないの、と文句を言いたくなる。
この間、私の思考はコンマの世界。
導き出した、切り抜ける方法は──
「ノ、ノー、アザー……リビング、シング……」
身代わり。



