お腹が満たされ、親たちのお酒を飲むペースも落ちてきた頃。
「そっち行っていい?」
「うん」
親たちが今日イチの盛り上がりを見せていて、向かいでは話が通りにくくなったので、瞬がテーブルの角を挟んだ斜め前に席を移動した。
「パパたち、さっきから同じ話で盛り上がってる気がする」
「だいぶ酔ってんな」
距離が近くなった分、話しやすくなった。
すると、
「そういやさ」と瞬が話を変える。
「さっきのあれ……結構、嬉しかった」
「あれ?」
「『瞬と付き合うのは初めて』ってやつ」
ああ、あれね。
『有咲は、誰かと付き合うの初めてじゃないだろ』に対する返答。
……嬉しい?
「俺は誰かと付き合うのって有咲が初めてだからさ、全然わからないことだらけで。そういうの悟られたくなくて余裕のふりしてたけど」
あくまで穏やかに口を開く瞬は、しかし。
最後にふっと口元を緩めた。
「有咲も同じだってわかって、嬉しかった」



