「有咲、そろそろ出るよー」

「待って。あとちょっと」


前髪よし、リップよし、ネックレスよし。


あ、ボディミストつけるの忘れてた。

ご飯を食べに行くだけだから香りのきついやつは避けた方がいいよね。


柑橘系の匂いにしようかな。

瞬、好きだし。


「有咲ー?」

「はーい、今行くー」


階下からママに呼ばれて、急いで階段を下りる。


「なんでそんな気合い入ってんの?」

「い、いつも通りだよ」

「そう?」


笑って誤魔化しながら、靴を履く。


気合いを入れているつもりはないけど、やっぱりオシャレに手は抜けないじゃない?

だって今日は……。


18時15分前。

家を出ると、お隣の渡辺一家もちょうど家から出てきた。


「グッドタイミング」


挨拶がてらに笑顔を見せる瞬パパ。

いつ見ても瞬と似ているなぁと思うし、愛嬌の良さも瞬がしっかり受け継いでいる。


瞬パパに比べれば瞬ママは控えめな感じだけど、とっても優しい。

“この親にしてこの子あり”とはまさに瞬一家のこと。