「はぁ……」


昼休み。

廊下の窓でたそがれる私から漏れるのはため息。


あのあと──瞬が『フィアンセ』と答えたあと。

何があったのかと言いますと……。



「「ええぇぇぇぇぇえっ!」」


刹那の間のあと、大気を裂くのではないかと思うほどの驚愕が教室を駆けめぐった。


……私はね、クラスではわりと静かにしている方なの。

大声を上げたり、叫んだり。普段はしない。

大人しく平穏に過ごせればいいかなって……。


……でもね。


「違うからっ!」


振り返って、大声で否定する。

案の定、瞬はからかうような笑みを浮かべていた。


“大人しく”というポリシーに反してでも叫ばずにはいられない!


よくもまあ、堂々と嘘をつけたね。

フィアンセってなに!?

勝手に幼なじみから格上げしないで!


「違うの?」

「違う!ただの幼なじみ」


あっ……言っちゃったよ、幼なじみって……。