あの日。


衝撃的な和楽器バンドの演奏を聞いてから、私の心は完全に一弘一色になってしまった。


今はもう健の色なんて少しも残っていない。


それはそれでよかったと思うのだけれど、今度はその一弘と連絡がつかないと来ている。


「私って恋愛に向いてないのかなぁ」


つい、そんな愚痴もこぼれてしまうものだ。


「一弘くんがなにを考えているのかはわからないけど、合コンのセッティングならまたできるよ?」


砂肝を食べ終えたアユミにそう言われて、私は顔を上げた。


「合コンかぁ……」


また新しい出会いを探すなんて少しも考えていなかった。


でも、このまま連絡の取れない一弘のことを待ち続けることはできない。


そもそも、私達はまだ付き合ってすらなかったのだ。


それなのに待たれてもきっと一弘も困るだろう。


「合コンするくらいなら、俺とやり直す?」


不意にそんな声が聞こえてきて振り向くと、そこには今一番会いたくない相手が立っていた。


健だ。


健の隣には派手な女の子がいて、健はその子の腰に手を回している。


「げっ」


思わず嫌な声が出てしまった。