「……ねえ、渉くん」

背後で無邪気に笑う渉に対し、美緒は辿り着いた一つの答えに体を震わせながら、グラスを塗られた唇を動かす。

「毒は、作り終わった後に誰かが入れたんじゃなくて、最初から入っていたんじゃないの?ブランデーに混ぜて……」

それができるのは、彼だけである。ゆっくりと振り向いた美緒に対し、渉は「名推理だね、美緒」と満面の笑みで拍手をする。それが美緒の中で恐怖をますます膨らませた。

「いや、黙っていれば普通の幸せが手に入ったんだと思うよ。だけどね、愛する人を縛り付けるっていう刺激がほしくなったんだ」

渉がそう言った刹那、美緒は首筋を叩かれて意識を失う。

それから先に待っているのは、渉とお腹に宿った子どもとマンションの一室という小さな世界だ。