どこか情熱的な口説き方は、美月が学生の頃に留学していた時に出会った現地の男性を思い出させてしまう。日本人はストレートに愛の言葉を言わない人が多いはずなのだが、慶太は違うようだ。

一気にアルコールを煽ったためか、美月の頭が次第にふわふわとし始める。それを見た慶太は「これ飲んでください」と水を入れたコップを差し出す。だが、美月は唇を尖らせて「やだ」と小さな子どものように言った。

「九条さんが飲ませてくれなきゃ、嫌だもん」

美月が頬を膨らませると、慶太はどこか幸せそうに優しい表情になる。二人は付き合っているわけではないのだが、まるで恋人のようなおねだりだ。

「わかりました。それなら、これを食べて待っててくださいね」

完全に酔ってしまった美月の前に、おつまみとして出されるチョコレートが置かれる。チョコレートはフランボワーズや抹茶など様々な味があり、美月は目を輝かせながらチョコレートを食べ始めた。