「それじゃ、少し事情が変わったから、今朝説明した状況とは違うわヨ。一度しか言わないから、ちゃんと覚えなさい? まず、ワタシの飛行船で上昇、ココは変わらず。次にシアンのグライダーでシュクリへ。で、ココから変更ネ。アシュリーは荷物じゃなくて、リルヴィちゃんを背負うこと。パラシュートはリルヴィちゃんに装着。リルヴィちゃんはパラシュートの開き方だけ覚えたらイイわ。タイミングはアシュリーが見極めなさい。じゃあ、次。ルクアルノ」
「……」

 真剣な顔をした全員が集合するソファの上で、独りアッシュだけがお姉様の説明に頷きを返さなかった。とは言えルクも驚きの変更事項に、頷いても理解は出来ず、と言った顔つきをしていなくもないけれど。

「あらん……どうもアシュリーは納得いかないみたいネ? アナタ、頭がイイんだからもう気付いているのでショ?」
「……え?」

 あたしはつと驚きの声を上げてしまった。アッシュは何を気付いているのだろう?

「分かっています……だからこそ、(あと)が怖い」

 「怖い」──アッシュから聞いたことのない言葉が現れて、あたしは一瞬息を呑んだ。

「気持ちは分かるわヨ。でもこれは師匠(ワタシ)からの命令。リルヴィちゃんはアナタ達の予防線ヨ」
「予防線って……お姉様、お願い、説明して! あたし、一体何が何だか……」

 俯いて沈黙してしまったアッシュ。その隣で頬杖を突いたシアンお兄様は、横目で静かに見守るだけで、ルクとあたしは依然良く分からないまま、アッシュの言う「後」に不安を(いだ)いた。