「ダメだよ、リル。君は連れて行けない。だから秘密にしてって言っておいたのに……どうしてこんなことになってるんだよ……」
「だって……! タラお姉様が行くって言ったんだもん!! あたしも行くわ……行かないでココでどうしてろって言うのよっ」
「行くのは僕とルクだけだよ。姉さんは途中まで! だからリルも大人しくしていてくれ」
「分かってる! 二人の足手まといには絶対ならないからっ! お願い~アッシュ!! パパを手助けしてママを助けたいのっ!!」
「君が一緒に行って、どうやって手助け出来るって言うんだよ……パパだって心配するに決まってるじゃないか。此処はどうか僕達を信じて──」
「??」

 ──あれから。

 驚いて固まってしまったあたしにお構いなしに、タラお姉様はこれからの『作戦』を事細かく説明した。

 まずはお姉様の操縦する飛行船で、シュクリには離れたまま上空へ。そこからシアンお兄様の操縦するグライダーでアッシュとルクを運び、パラシュートで山の中腹にダイブ! パパかツパおばちゃんと合流し山頂を目指す、と言うのだ。

 呆然としながらも少しずつ理解をしたあたしに、準備を終えて出てきたアッシュが気付いた。それから徐々に瞳に輝きを取り戻したあたしを、反面顔色を曇らせたアッシュが(いさ)め始めて……そんなやり取りが延々続いているところへルクが帰還、言葉もないまま「??」と首を(かし)げてしまった、という場面なのであーる。

「あ、ルクアルノ帰ってきたわネ。それじゃそろそろ兄妹ケンカも終わりにしてちょうだい。とりあえず『作戦』の詳細を頭に入れてもらうわヨ」
「姉さん……!」

 エントランスの廊下で立ち止まったまま、「兄妹ケンカ」をしていたアッシュとあたし、そして意味も分からず傍観していたルクを、リビングの扉からお姉様が手招きした。

 仕方なくといった様子で口をつぐんだアッシュが、唇をへの字にして先を歩く。分かってるって……アッシュは怒ってるんじゃなくて、心配してくれてるんだってこと。だってあたし達は「家族」だもんね!