「た、宝……物……」

 そう呟いた瞬間、耳に刺さる音が響いて、ルクの剣が(くう)を舞った。

「そろそろ朝食も出来るだろうし、この辺でやめよう、ルク。……あれ?」

 自分の剣を鞘に収めたアッシュがあたし達に気付いて、その(おもて)は瞬時にバツの悪そうな表情に変わった。

「おはよう、リル……見てたの? 兄さん、内緒にしてって言ったのに……」
「そうだっけ? タラが連れてけって言ったんだよ。どうせ数時間後にはバレるだろ?」

 数時間後? 数時間後!?

「お、おはよう、ルヴィ……良く眠れた?」

 飛んでいった剣を拾いに行ったルクが、駆け寄りながらあたしに尋ねた。その顔も何だか困惑気味だ……いえ、一番戸惑っているのはあたしなのかも知れないけれど!

「う、うん……ベッドが大きくて快適だったよ……おはよう、ルク、アッシュ」

 ルクが昨夜送ってくれた時に話した、あたしとの時間をアッシュと『分け合う』件が、『宝物』とイコールで繋がった気がした。そう思ったら、何となく二人と目を合わすのが気恥ずかしくなった。と共にもう一つの疑問が繋がる──タラお姉様が告げたアッシュのヴェルを訪れる『理由』──それはタラお姉様に剣術を習うためなんじゃないだろうか?

「みんな、ご飯出来たわヨー!」

 気まずい空気がお姉様の元気な呼び掛けで、一気に透き通った気持ちがした。あたしは一番に「はーい!」と応え、この場から逃げるように先頭切って朝食の席に着いた。