パパは……もうどのくらいまで山を登っただろうか──?

 アッシュとルクのお陰で、タラお姉様とベビちゃんのお陰で、思い詰めることもなく翌朝を迎えられたあたしは……けれど先に部屋を出ていくお姉様の背中をぼんやりと見詰めながら、温かなお布団の中で結局身動きが取れなくなっていた。

 サリファがパパに指示したシュクリというのは、ヴェルの北側に(そび)える高い山だ。島の三分の一は、その裾野で占められている。大人の脚でも山頂までは数日掛かってしまう筈……パパは途中何処かで食料や登山の道具を調達したのだろうか? ママは……一体どうなったのだろう……ちゃんとご飯を食べさせてもらえているのだろうか?

 タイムリミットは、この朝から三日間。それまでママの命を保証するとサリファは言ったけど、そんな約束、あんな怖い人が守ってくれるとは限らない。

 考えれば考えるほど、悪い方向へ沈んでしまいそうだった。だからこそ昨夜のお姉様もお兄様も、何も訊かずにいてくれたというのに──。

「あー! もう~こんなことじゃダメダメ!!」

 あたしは両ほっぺをパンパン叩いて飛び起きた。みんなあたしのために明るく努めてくれているんだ。あたしが暗い顔をしてたらみんなが悲しくなっちゃう!

 着替えて洗面所で顔を洗い、美味しい匂いのするダイニングへ向け背筋を伸ばした。もうツパおばちゃんも来ているかも知れない。