「その反面、同じように厳格に育てられた筈なのに、叔従父(いとこおじ)のシアンはあんなに自由奔放に生きてきたでショ? 今でこそココに落ち着いているシアンだけど、自分の思うままに進んできた彼を、アシュリーは理想と思っているんじゃないかしら? でもネ、こんなに正反対な従兄弟同士なのに、意外に仲は悪くはないから、シアンが上手く話を(まと)めてくれて、今でもアシュリーは長期休暇の三分の一程を、ココで過ごすことが出来ているというワケ」
「……」

 あたしは返事をすることすら出来なかった。いつも笑顔のアッシュなのだもの、きっと我が家にも負けない素敵なファミリーだと思っていたのに……。

 それでもその時、一つの答えに行き当たった。ルクのお宅を離れる際に、一瞬見せた淋しそうな微笑み。あれは多分ルクのご家族を羨ましく思ったからだ。

「リルヴィちゃんは心配しなくて大丈夫ヨ。あの子にはシアン以上に憧れの存在がいるみたいだし、ココに来る目的も、ちゃんと理由があるのだから」
「憧れ? 理由??」

 けれどタラお姉様は「フフフ」と笑って、その二つの答えは教えてくれなかった。「おやすみなさい、リルヴィちゃん」そう言って、あたしの髪を撫でながら、お姉様とベビちゃんとあたし、誰からともなく眠りに落ちていった。

「いったーいっ!!」

 明け方。

 ベビちゃんに蹴られたお姉様の叫びで、早々に起こされるまでは──!!