「ごめんなさい! ごめんなさいっ……お姉様!!」

 あたしは目の前で急停車し、大きく振りかぶって頭を下げた。その後ろに二人も駆け寄ってきたのが感じ取れた。

「あらん……イヤあネェ~どうして謝ってるの? リルヴィちゃん?? ワタシはアシュリーが何処かでカワイコちゃんでも口説いてるんじゃないかって、心配して待っていただけヨン。まぁ~もう一人騎士(ナイト)が付いていてくれたみたいだから……安心したわ」
「あ……」

 やっぱり……タラお姉様は、あたしを心配してココまで出てきてくれていたんだ。

「姉さん、ごめん……遅くなって」

 真後ろからアッシュの申し訳なさそうな声が降ってきた。

「いいえ~お陰様でシアンの愛の深さも三人に見せつけられちゃったしー? まぁとにかく中へ入りまショ。ルクアルノ、電話貸してあげるから、今夜はアシュリーの部屋に泊まるって、親御さんを安心させなさいヨ?」
「は、はい! ありがとうございます!」

 ルクがパッと明るい声で顔を上げたのが目に入った。きっとすぐ家に帰されてしまうと危惧していたのだろう。

 可憐なシャンデリアが煌めくエントランスの眩しさは、タラお姉様の幸せな生活を示しているようにも思えた。

「誰からか聞いたんですか?」
「ええ。ツパイの使いだって男性が一人駆けつけてくれたわ。ツパイは明朝来るそうだから、今夜はもう寝ましょうネ。リルヴィちゃん、シアンはルクアルノと三人で、アシュリーの部屋で眠ることになったから、ワタシと一緒に休みまショ」

 アッシュの問いに答えながら(いざな)うタラお姉様に連れられて、まずはリビングのソファに腰を下ろした。ルクが自宅に電話をしている間に、洗面所を借りて着替えと支度を済ませた。

 タラお姉様もシアンお兄様も、パパとママのことは一切訊いてこなかった。ツパおばちゃんの使いの人に事情を聴かされたからだろうけど、何も口に出さないのは、きっとあたしのことを想ってなんだろう。