「リル、ランチはどうする? 今朝隣のおばさんから貰ったホワイトアスパラガスが沢山あるから、新鮮な内に茹でようか? ソースはオランデーズソース(卵黄とバターの温かいソース)とヴィネグレットソース(酢とオイルで作る、いわゆるフレンチドレッシング)のどっちが良い?」(註1)

 パパは離陸したばかりの船内キッチンから、リビングど真ん中のテーブルのあたしに質問をした。その魅惑的な十文字に、ぽーっと脳内に巡らせていた今までの経緯も弾け飛ぶ。ホワイトアスパラガスはあたしの大好物だ! ニッコリ笑って頷いて、パパの問い掛けた二つのソースではなく、固ゆで卵と溶かしバターのソースを掛ける、いわゆる『フランドル風』をおねだりした。

 パパは快諾してあたしに背を向け、その後ろ姿は持ち切れないほどのアスパラガスを握り締めていた。……で? 茹でアスパラは前菜で、メインは別にあるのよね??

「あ、ママー、今日の離陸も気付かないほどだったね! さっすが~!!」
「ありがとー、ルヴィ」

 階下の操船室でお見事な離陸を果たし、自動操縦に切り替えたママが上がってきて、あたしはママにもニッコリと微笑んだ。途端おんなじ笑顔と感謝の言葉が返される。ジュエルが見せてくれた昔のママは、今のあたしに結構似ていて可愛らしい。言葉遣いはなかなか荒っぽかったみたいだけれど、それは内緒にしておいてあげてね!