影は曲がり角を左折して、その先の角を今度は右折した。その時街灯の明かりが僅かに捉えたのは──パパの横顔と、肩に乗ったピータンだった!

 ──パパ……一体何処へ……?

 遠目でも暗くても、その口元が引き締められていたのは分かった。いつものニコニコパパじゃない……何だか気持ちの悪い胸騒ぎを感じて駆け出そうとしたところ──

「ルヴィ……なの?」
「え?」
 
 突然後ろから掛けられた声に、立ち止まり振り返る。三歩向こうの暗がりから現れたのは──ガウンを(まと)ったママだった。

「あなたまで……こんな所で何してるの? 早く帰りなさい」

 ママの声は近所を気にして小さく押し殺されていたけれど、その表情はパパと同じで、いつもと違い真顔だった。

「ママこそ……パパこそっ!」
「パパ……? やっぱりパパはこっちへ来たのね!?」

 ママもパパがいなくなったことに気付いて……?
 嫌だ……嫌な予感がする……お願いだから、あたしを帰さないで!