ルクはそれから再びあたしの半歩先を歩き、警戒しながら我が家まで送り届けてくれた。

 でもそれはこれ以上、あたしに問い掛けられたくなかったからかも知れない。理由はツパおばちゃんの事情を知っている、と言うよりも、それ以上は知らないから、だったようにも思われたけれど。

「リルのことをありがとう、ルク。気を付けて帰るんだよ」
「は、はいっ」

 戸口へ出てきたパパにお礼を言われて、ルクははにかみながら返事をした。

 パパはそんなルクから視線を上げて、庭の生け垣の向こうをじっと見詰めた。あたしから見えるパパの横顔は、口角を上げて薄っすらと微笑み……何を見たのか、一つゆっくりと頷いていた。

 慌ててあたしもその方向へ首を向ける。遠い暗がりに溶け込んでいったのは、アッシュの後ろ姿にも似た薄茶色い後頭部? ──って、まさかね!?

「サンキュー! サー・ルクアルノー!! 明日もヨロシクねー!」
「ラ、ラジャー!!」

 あたしはもう一度あのヘンテコな敬礼をして、もう一度生真面目に応えたルクを見送った。駆け出す姿が闇夜に消えた頃、隣のパパがあたしの肩に手を置き、優しくリビングへ連れ立った。