「えー、えっと……あー! ね、ねぇ、ルク!」
「んん?」

 隣でトボトボと歩いていたルクの、丸っこい瞳が戸惑うあたしの表情を捉えた。

「ツパおばちゃんが首相になったら嬉しい?」

 何となく現れたのは、昼間の出来事の続きだった。

 真正面に向き直したルクの横顔が、大切な質問だと言うように一度沈黙を作る。

 そしてしばらくルクも考えを巡らせたのだろう、ゆっくりと開いた口元から、

「ボクはおばさんがなってくれたら嬉しい、と思う。自分の伯母さんだからって訳ではなくて……おばさんはそれに見合う人物だと、思うから。でも……」

 この時のルクは、不思議とどもらずに答えを返した。それからふいに歩みを止める。二歩ほど進んでしまったあたしの振り返る眼差しに、思いの丈を紡ぎ出したルクの面差しは──

「でも今のおばさんは……ならない方がいいのかも知れない。あんなおばさんは初めて見たから……だからおばさんは、きっとならないと思う」
「──え……?」

 そう断言したルクもまた、あの時のツパおばちゃんと同じくらい辛そうに見えた。

 何故なの? ツパおばちゃんは何を抱えているの?? 一体どうしてならないというの──!?



※作者談・・・とは言え、夜道に子供?二人では心配なので、アッシュは離れて二人を送っておりましたとさ(笑)。