ん? キミはハネムーン・ベイビーなのかって?

 違うよー。まぁ、このヴェルに行った時の二人はまだ正式に籍を入れていなかったし、この旅がハネムーンでもなかったけれど。

 あたしが生まれたのはその三年後。だってパパは魔法の眠りから覚めたばかりで仕事をしていなかったし、ママも学校と研修を終えた就職間際だったから。

 ちょっと複雑な話になるけれど、実際パパは義眼師のお家に生まれたの。パパのママが王家アイフェンマイアのお姫様で、義眼師のお家に嫁いだんだ。だからパパも義眼師の修行をしていたんだって。ヴェルから戻ってママのお家で暮らし始めたパパは、まず一番近い街の大きな市場に小さな出店(でみせ)を広げて、今まで造った精巧な義眼を道行く人にお披露目した。パパは「義眼の義眼師」だから、その義眼を自身の左眼に挿入して、全く違和感のないその様子に、人々はもう仰天ものだったのだそう! そうして噂が噂を呼んで、パパの仕事は順調に安定し、今でも自宅の作業場でお仕事をしているって訳。

 一方ママも帰宅後に正式に就職先を決めて、一番近い飛行船修理工場で働き出した。操船士の腕も買われて、時々日帰り程度の航行にも出張する。もちろんあたしを出産する前後はお休みをしなければいけなかったけれど、早々に完全復帰したのは……そう、パパがいつもお家にいてくれるからかな? だから家事・育児・家庭菜園や花壇の手入れは今でもパパのお仕事。一方主に家計を支えているのはママなのだ。お陰であたしはどちらかと言えば~パパっ子なのかも知れない?