「でも珍しいよね? アッシュがうちまで送らずに帰っちゃうなんて。何か用でもあったのかなぁ?」

 ふと問い掛けた後ろからの声に、ルクはいきなり立ち止まってしまった。並んだ肩に合わせて再び歩き出したけれど、その横顔は俯きしゅんとしている。さっきまでの燃え立つ意欲は何処へやら、水を掛けられちゃった焚き火みたいだ。

「た、多分……アッシュはボクに、き、気を遣ったんだ……ボ、ボ、ボクが飲み物を買いに行ってる間、ル、ルヴィを独占……し、しちゃった、からって……」
「……へ?」

 な、な、何言っちゃってるの??

 あたしは急に脳ミソの回転が悪くなった気がした。いえ……元々そんなに回転の良い脳ミソではないけれど。うーんと、えーと? それってまるで告白みたいじゃない?? い、いや……あたしの思い上がりな思い込みか!? そ、そうだよね……最後に会ったのは三年も前で、この十四年の人生の中でも、トータルにしたって数十日しか会っていない相手なのだもの!

 あたしはまるでルクのどもりが伝染(うつ)ってしまったみたいに、浮かび上がった言葉の数々が、混乱した脳内をグルグルと駆け巡ってしまった。と、と、とりあえず「好き」だとハッキリ言われた訳じゃないのだ。深く考えるのはやめよ……そう思い直したあたしは、とにかく話題を変えることに頭を使い始めた。