島の中心を南北に貫く大通り。もうすっかり暗くなった空の下、お店や街灯の明かりが辺りの空気を華やいで見せる。

「ルク、此処からはリルを送ってくれる?」
「え? う、うんっ」

 あれからそれぞれの飲み物で身体の温かみを取り戻したあたし達は、家々から零れる光を頼りにココまで戻ってきた。

 明るくなった周りの景色に、この先は「ルク一人で大丈夫」との結論を出したのだろうけど、アッシュが最後まで送らずに、あたしをルクに任せたのは意外だった。

「アッシュ、送ってくれてありがとう。また明日ね」
「どういたしまして。明日こそは宿題を終わらせようね」
「うっ……! ……うん」

 お礼の言葉に帰ってきた宣戦布告(?)は、あたしの二の句を途切らせた。まぁでも……お陰で後半はたっぷり遊べることになるのだ。この荒行(?)もアッシュに感謝しなくちゃ、ね……。

 シアンお兄様とタラお姉様のお宅に厄介になっているアッシュは、手を振りながら来た道を戻っていった。そこから少し西南へ向かった先に、二人の愛の巣があるからだ。

「じゃあ、我が家までヨロシクー、※サー・ルクアルノ!」(※サー(Sir)は騎士(ナイト)の称号)
「ラ、ラジャー!!」

 おどけた敬礼にルクは生真面目な敬礼を返した。周囲を警戒するようにキョロキョロと見回しながら、あたしの半歩先を歩き出す。いや……そんなに心配するような物騒な国でもないけれど?