「そう? それじゃ遠慮なくご馳走になるよ」
「ルク、あたしもありがとー」

 アッシュとあたしのお礼に、ルクは恥ずかしそうに瞳を逸らして、あたしの隣に並んだ。徐々に藍色に暮れる海を見詰めた三人の影が、振り向けば背後に茂るラヴェンダー畑の上に、長ーく伸びている。

「そう言えば、ツパおばちゃんが首相になったら、ルクは首相の甥っ子ってことよね? 今から考えておかないと大変じゃない?」
「えぇ……? な、な、何を考えておくべきなの??」

 横から掛けられた意味の分からない質問と、意地悪そうなあたしの流し目に、ルクはいつも通りビビってくれた! やっぱり相変わらずお子ちゃまだなぁ~!

「何をって~決まってるじゃない! きっとヨーロッパ中から押し寄せるわよー「伯母が首相になった感想は?」って、沢山の新聞記者が!!」
「ひっ、ひぃ~!?」

 驚いたルクはミルクセーキと共に飛び跳ねて……夕焼け色に溶け込んだ赤茶色の髪が、ふわりと揺れた。

 慌ててアッシュの長い腕があたしの前に伸ばされる! その腕が彼を掴まなければ、ルクは丘を転げ落ちるところだった──!!