「あ、ルクが帰ってきたよ。おかえり、ルクー!」

 ちょうど俯いた視線が、砂浜から丘を登ってくるルクの姿を捉えた。夕焼けを待ち侘びている内に、風が冷たくなったのを心配して、近くの商店に温かな飲み物を買いに行ってくれたのだ。

 あたしは立ち上がってお尻に敷いていたハンカチーフの砂を払った。駆け上がったルクの向こうで、花火の芯が消えるように夕陽が海へ落ちた。

「ご、ごめん……遅くなっちゃった?」

 そんなに待ちくたびれた顔でもしちゃってただろうか? 紙袋から取り出されたホットココアを受け取り、ううんと首を振って、ありがとうと笑顔で返す。

「ルク、お代は幾ら? 僕が払うよ」

 アッシュはホットコーヒーをお願いしていた。ポケットからお財布を取り出す仕草をしたが、

「い、いいよ! ボク、母さんからおこずかいもらってきてるからー」

 ルクは慌ててそれを制し、コーヒーを素っ気なく手渡した。自分はどうやらホットミルクセーキを買ったらしい。カップの蓋を開けた途端、甘い香りが漂う。相変わらずお子ちゃまだなぁ。