「ねぇえ? これからヴェルはどうなるの?」

 あたしはラヴェンダーの薫る風を受け流しながら、隣に立ったアッシュの横顔を見上げた。

 ずっと上方で遠くを望む涼しい眼差しが、オレンジ色の光に染められながらあたしを見下ろす。

 あれからツパおばちゃんは、驚愕を喉に詰まらせたみたいに沈黙してしまった。そんな静けさに一石を投じたのは……意外なことにパパの一言だった。

「ツパ。私もそれが最善だと思う。ヴェルの為にも受け入れてほしい」

 その意見と要望に、周りの皆も同意の頷きを返す。ツパおばちゃんの(おもて)はそれを機に、テーブルを挟んで斜め向かいのパパへゆっくりと持ち上げられた。けれどやっぱりしばらくの間は何も答えなかった。やっとのことで現れた言葉は──

「……少し、考えさせてください」

 ──それだけだった。

 それからデザート・タイムが再開し、食事を終えた面々があちらこちらで談笑をし、パパ達はお土産を配りながら「大人の話があるから~」なんてあたし達を邪険にしたので、こうして三人海へ沈む夕陽を見に、西岸の丘陵へやって来たという訳なのだ。