王宮の煌びやかな大広間で、賑やかな昼食会が始まった。
 
 今の王様はパパのママの叔父さんの孫に当たるから……えっと、親戚としては何だろう? パパよりちょっと年上だろうか? 穏やかそうな優しい笑顔であたし達を歓待してくれた。

 王様を中心とした細長い楕円形の大きなテーブルに、決められた通り次々と着席する。王様の斜め隣にロガールじじ様、逆の斜め隣にツパおばちゃん。その並びにタラお姉様とシアンお兄様、向かい側にパパとママ。それから王族や政府の面々が続いて……で、あたし達「お子ちゃま」は一番遠い王様の真向かいに腰掛けた。あたしの右隣がアッシュ、左隣がルクだ。

 王様の短い挨拶の後に、ロガールじじ様の乾杯が続き、和やかに食事が進められる。こうした正式な会食に出席したことなんてあっただろうか? 特に記憶のないあたしを心配して、パパがテーブルマナーを躾けてくれたとはいえ、緊張した手先がプルプルと震えてしまう。左へそろりと視線を移せば、同じような影が固まっていた──ルク。

「大丈夫? リル」

 と同時にひっそりとした声で、右からアッシュが声を掛けてくれた。彼は普段から落ち着いているけれど、こういう場にも慣れているのだろうか? フォークとナイフを握る指先の動きが洗練されている。

「う、うん。あたし、初めてだから」
「僕のを見て真似すれば良いよ。ルクにはリルのを見せればいい」

 と、ルクに聞こえない小声で目配せされた。こういうところ、本当に敵わないなぁ……昔からアッシュの気の回しようには誰も太刀打ち出来ないと感じていた。

「ありがと、アッシュ」

 薄く笑んでコソコソとお礼を言う。アッシュの手元に集中し要領を得たあたしは、料理と格闘を続けているルクに耳打ちして、あたしの動作をお披露目した。