口元を上品にテーブルナプキンで拭き取ったアッシュが、ルクの分まで答えたせいか、ルクは少し恥ずかしそうに無言でパパに頷いてみせた……って言うのは、口の中にたっぷり頬張ったウィンナーが、まだ入っていたからみたいだけど。

「そう。なら、また賑やかなランチになりそうで良いね。それまで二人とも時間は?」

 と、パパが再び質問した途端、「うっうん!」と咳払いをしたルクが姿勢を正す。何を競おうと思っているのか、今度はどうしても自分が答えたかったらしい。アッシュに「ボクが!」みたいな表情で牽制し、けれどやっぱりヘンテコなどもりは治らなかった。

「ボ、ボ、ボクはっ! だ、大丈夫です~いつでも、どこでも!! な、なんでもやりますっ!!」

 いや、多分パパが頼みたいのは、ルクには無理なことだと思うよぉ?

 あたしは両掌に顔を乗せて、斜め右側にあるルクの奮起する横顔をジト目で見据えた。

「僕も大丈夫ですよ。何をしたら良いのですか?」

 反面、左横のアッシュは至極落ち着いている。そして彼ならお手の物なのだろう。今度はアッシュを視界の端に入れて、はぁ~と一つ溜息をついた。だって……

「リルの宿題を見てもらいたいんだよ。ただ答えは教えないでね。あくまでもやり方だけを教えてほしい」

 ほらね~やっぱり。

 そしてパパのお願いに案の定ルクの呼吸が「うっ!」と唸って止まる。ルクも「こちら側の人間」なんだからダメなんだってー!

「承知しました。僕は皆さんを待つ間に、自分の課題は済ませておきましたから。──ルク? ……も、良かったら持っておいでね」

 返事をしつつ「固まったルク」に気付いたアッシュは、少々困ったように声を掛けた。またまた恥ずかしそうに身を縮めるルク。そんなに恐縮することないのに~。