「ん……」

 頬に肌触りの良い何かを感じて目が覚めた。えっと、今まで……どうしていたのだっけ? 触れているのは……ブランケット? 見える天井は我が家よりも近いから、飛行船の中かしら? 確かに飛んでいるような振動を感じる。

 凄く眠った感じがした。どれくらいこうしていたのだろう? 起き上がろうとしてふと気付く。何故か両手が……動かない? ちょ、ちょっと待って~以前にもこんなシチュエーションあったよね!? サリファに飛ばされた王宮のおばあちゃんの寝室……まさか今まであたしは夢を見ていて、まさかまだサリファに鎖で繋がれている訳じゃあ……ない、よねぇ!?

 恐怖に慄きながら頭だけを持ち上げて、左右に首を振るとヘーゼルナッツ色と赤茶色の髪が見えた。これって……アッシュとルクの頭? あぁ~良かった! あたしの手を握っているのは二人の手だ! 寝台の両側であたしが目覚めるのを待っていてくれたのだろう。二人はきっと待ちくたびれて、突っ伏したまま眠ってしまったに違いなかった。

(ありがとう。ルク、アッシュ)

 起こさないよう小声でお礼を言って、今までの経緯を脳内から拾い上げた。