グルグルと回る視界から瞼を閉じると、体内を巡る心地良い音楽が聞こえた。──音? ううん、これは声だ。リトスの声? ──穏やかな声音に、耳を、心を、傾けてみる。

 ジュエルの中には色んな想いが溢れていた──。

 一度目の町狩り。瓦礫(がれき)の中で死を待つばかりの諦めた自分に、一陣の光が差し込まれた。

 四人の少女達は沢山の愛情を持って、自分の身体と心を癒してくれた。彼女達は決して諦めなかった──自分(リトス)のことも、彼女達自身の未来のことも。

 少女達の希望に応えたい、彼女達を守りたい──それがヴェルを復興させるという目標へと繋がった。

 けれど再び起きてしまった二度目の町狩り。自分独りではもはや不可能だった。頼れる者は神のみ──霊峰シュクリエルムの神は、自分の祈りに応えてくれた──只一つ、彼女達を永遠に守るためには、人ではいられないとの条件付きで。

「そっか……」

 リトスは命の恩人である四人の少女と、彼女達四家系の未来を守りたかったんだ。けれどそんな矢先、エルムは山へ自分の身を捧げてしまった。シュクリエルムはリトスの願いを知り、後半の名「エルム」を彼女に与えて、シュクリとして少女を守ることを約束した。そして三人のお姉さん達は自分達が捧げたラヴェンダーの品と、エルムが捧げたラヴェンダーの種がキッカケとなり、ジュエルを宿した王家と関わりを持つことで、未来永劫一族が安泰であるように約束された……そういうことだった──。