「え? あ! えっ!?」

 認めたくない気持ちを抑えつけながらも、仕方なく瞼を開いてみる。ああ……嘘でしょ! 視界が赤黒い……!!

『ふふ……リトスよ、そう易々とわれを騙せると思ったか?』

 火口の入り口で呆然自失していた筈のサリファの霧が、シュクリ山の真下まで長―く触手を伸ばし、あたしを完全包囲しているなんて!!

『何やら二人して楽しそうに、コソコソとナイショ話をしているようだったからな……途中から小芝居を打って聞き耳を立てていたのさ。折角溜め込んできたわれの同志を無駄死にさせられては困るのでね……リトスよ、そろそろわれに譲ってもらおうか』
「……!!」

 今度はあたしが呆然自失する番だった。まったく……どれだけ地獄耳なのよ!! いや……まだだ。きっと策はある! ジュエルには負担を掛けてしまうかもだけど、先にサリファ達を吸い取ってしまえば──

(たくら)みがあるなら早急に諦めるがいい。山頂をご覧? 既にエルムはわれの手の内だ。お前達が不審な動きをするなら、エルムがどうなるか……さて、どう調理してほしい?』
「そんなっ──!!」

 咄嗟に見上げたシュクリの山頂、ジュエルのヴィジョンでなければ見えないほど遠くだけれど、確かにエルムが蜘蛛の巣もどきにがんじがらめにされていた!