以前と同じく腰を屈めて、それでも何とか小走りで前進した。やがて『ジュエル』が「ストップ!」と告げるように、明るく発光してあたしの歩みを止める。数歩先の左壁と地面との境界に小さな穴が開いていて、覗いてみれば遥か下方に煙る火山島が見えた。



「了解……あそこね。インターデビルの真上まで行ったら、リトス、後は宜しくね!」

 「分かった!」と言わんばかりに左眼(ジュエル)が明滅したので、あたしは剣先で穴の(へり)を突いて、自分が通れるくらいの大きさに広げた。途端冷たい風が洞内に吹きつける。思い出す──グライダーからシュクリへ飛び降りたあの風を。アッシュの背に抱えられて、パラシュートを開いたあの瞬間を。

「リル、飛行準備! カウントするよ、5・4・3……」

 あたしはアッシュの声真似をして、あたし自身に語りかけた。震える両手にギュッと力を込めて、マントの端に手を掛けた。

「……2・1・GO!」
 
 「ジャーンプっ!!」と叫びながら、あたしは穴にその身を投じた! まとわりつく空気が激しさを増して、目も開けられないまま重力に身を任せる。やがて下降は緩やかに──やっぱりマントのお陰かしら? いや……気付けばすっかり静止して、風もいつの間にか穏やかに……ううん、何故だかさっきまでの淀んだ『気』を感じるのは……ええと、まさかね……これって、つまり!?