『何故だ! シュクリよ、一体何処へ行こうという!? 戻れっ、戻らぬのなら……せめて動きを止めよ!!』

 上空の赤黒い煙は、焦燥を隠せぬように右往左往していた。

(ね、エルム。シュクリは何処へ向かってるの?)

 サリファ同様行き先を知らないあたしも、さすがにエルムに問い(ただ)した。シュクリにはちゃんとした目的地があるのだろうか?

(うん、アタシの知らない国にあるのだけど、リトスがウェスティと一緒に訪れたことのある島だって。そこにもシュクリみたいに大きな山があって、火口の中はガスが沢山充満していて……ウェスティは二十年前にそこへ火を放ったの。ガスに引火した山の中は、それからずーっと燃えてるんだって!)(註1)
(うん!?)

 それって……何処かで聞いたことのある話だった。えぇと、何処だったろう何だったろう……あー頑張ってよ、あたしの脳ミソ! これだからママにもヴェルまで宿題持たされる羽目になるんだってば! ……ん? 宿題!? そうだ……宿題!!

(あたし、それ知ってる! 『悪魔の口(インターデビル)』って呼ばれている無人島の火山だ。確かに教科書には二十年前から急に燃え出して、今でも燃え続けてるって書いてあった。でも……まさかウェスティがその火を点けたなんて!!)
(リルヴィのママは気付かなかったみたいだけど、二十年前にウェスティはリルヴィのお家からその島まで『糸』を張ったのだって。今シュクリはその『(みち)』を辿ってるの。だからその内火口の上に着くよ。そして辿り着いたら……アタシ達の出番)