さて……彼らがママの言った『二人』であり、あたしを「リル」と「ルヴィ」と呼ぶ両親以外の人物だったりする。

 まずはアッシュこと、アシュリー=エヴァンス。彼はあたしより二つ年上だから……今は十六歳。パパがお姉さんのように慕っているタラおばちゃんの親戚に当たる。タラおばちゃんはカラーセラピストとしての技術を磨くために、ヨーロッパを旅していた時期があって、その時に今のご主人──イギリス人のシアン=エヴァンスさんと出逢った。シアンおじさんは七歳も年上のタラおばちゃんに一目惚れだったんだって! 更に世界的に有名なファッション・デザイナーなのに、タラおばちゃんの一族が作るラヴェンダー染めの布地にも惚れ込んじゃって、熱烈な求婚と共にヴェルに住みついちゃったんだ。だからそれ以来その生地を使った洋服しか作らないけれど、お陰でヴェルのラヴェンダー染めは、ファッション業界でも引っ張り凧だ。ちなみにシアンおじさんはアッシュのお父さんの従弟で……パパも負けるほどの超美形! だからその血を受け継いだアッシュもまぁ……どうもそんな風に成長しているみたい。

 でもアッシュ自身はシアンおじさんの故郷(ふるさと)イギリスに暮らしている。どうもタラおばちゃんから聞きつけては、あたしに会いにヴェルへ来てくれているみたいなんだ。

 それからルク、ね。本名はルクアルノ=ヴェル=ユングフラウ。彼はれっきとしたヴェル国民だ。昔パパが王様の頃、王宮に仕えていたツパおばちゃんの甥っ子で、あたしと同じ十四歳。小さい頃から人見知りが激しくて、気弱で大人しくて……でもこんなに奥手でどもり癖なんてあったかしら? 着替えを済ませて戻ってきたあたしをチラリとは見たけれど、何を想像したのだかまた顔を赤くして、手元のクッキーを見下ろしてしまった。