それでもこの二千六百年の内に三度の失敗を経て、ついに四度目の今回サリファは五十年もの時を費やし、ウェスティを使って壮大な策略を仕掛けたのだ。神様ですら太刀打ち出来ない相手なのかも知れない……ネガティブな考えが心を黒々と染めてしまう。そんな気持ちが震えとなって、腕を絡め合うエルムにも伝わってしまった。

「ごめんね、リルヴィ……」

 弱々しい声音に顔を傾ければ、泣きそうな顔をしたエルムがあたしの顔を覗き込んでいた。

「えっ、あ、ううん……あたしこそごめん。ジュエルとあたしが一緒なら、もっと簡単にやっつけられるかと思ってた……」
「ううん……今までと同じ状況だったら、きっと簡単だったと思うよ。でもこのままじゃ……」
「そう、だよね……」

 シュクリが単独で空へ飛ばされているという緊急事態の今、そんなことをしたらどうなってしまうのか……あたし達には想像もつかないのだもの。

 とにかくシュクリを一刻も早くヴェルに戻して、サリファを封じ込めないと! その手段を考えあぐねている間にも、ジュエルが見せる外の景色はスピードを増して流れてゆく。眼下に見えるのはまだ海だけだけど……シュクリは東の大陸へ向かっているような気がした。
  
「サリファ……シュクリを、あたし達を何処へ連れて行こうというの!?」

 益々黒みの増していく天蓋(サリファ)を見上げて、あたしは大声で叫んだ。

『フン……もちろん決まっているじゃないか。お前の生まれた……そうさね、お前の恋し~い「お(ウチ)」へ、だよ……!!』
「うそぉ~~~!?」

 サリファの目指す目的地が……──「我が家」って一体どういうこと!?