「ダメ……シュクリ、きっとサリファに操られてる……どうしよう、このままじゃ……」
「うそぉ~~~!?」

 神様までをも操るだなんて!! サリファは一体どれだけ強大な力を身に着けているというの!?

 シュクリの地響きは治まるどころか、次第に大きく激しくなっていった。やがてずっと下から赤黒い煙がスルスルと湧き上がって、まるで上方向へ逃げるように視界が晴れ渡った。

 もしかしてココって以前山頂からあたしが落とされた火口底!? あたし達を取り巻くシュクリの岩壁が、物凄い音を立てながら揺さぶられている。 

「シュクリ! お願い!! お願いだから──!!」

 エルムの必死な願いは届かず、ついにシュクリが……浮かび上がった!?

「うそぉ~~~!?」

 自分達の浮遊は静止しているのに、周りの景色は明らかに上昇しているのだ。どんどん眼下の地面が近付いてきて、あたしは慌てて上へと飛んだ。見上げた先のサリファの赤霧は、火口を塞ぐように傘状に広がっていった。

「一体どうなってるの……!?」

 エルムとあたしは空間に合わせて浮上し続けながら、上下左右を(せわ)しなく見回した。

『フフ……ヴェルは再び「空の国」と化すのさ。世界を支配する為にね……』
「……えぇ?」

 あたし達の戸惑いに、嬉々として答えたのはサリファだった。でも空の国って……またヴェルを宙に浮かべようというの!? それより世界を支配するためにって……?