「ごめんって……リル、逃げなさい!」
「ごめんなさい、パパ……ママにも、みんなにも。でも、ダメなの……パパじゃエルムを救えない。サリファは倒せても、エルムは救えないの!」
「エルム……!?」

 カプセルからようやく抜け出した二人と、アイガーの寄り添ったツパおばちゃんとビビ先生も怪訝そうに集まってきた。

「ツパおばちゃんが言った『名もなき少女』だよ……あの子はサリファなんかじゃなかったの。サリファが動くために操られてきた神様の使い……ココで決着をつけないと、また六百年後にエルムはサリファに取り込まれてしまう! だから!!」

 肩に乗ったピータンを、あたしは優しくパパに返した。

 ごめんなさい──パパとママの想いを、あたしは裏切ろうとしている。

 魔法とは無縁の普通の生活。でもたった一度だけでいいの。ジュエルの力をあたしに貸して!

「リル……」

 戸惑うパパの手は動こうとはしなかった。分かるよ……パパがあたしを危険な目に遭わせるような行為なんて出来ないことは。でも!!

「『ラヴェンダー・ジュエル』」

 あたしはパパの左眼(ジュエル)に呼び掛けた。

「エルムを、ヴェルを、サリファから永遠に救い出したいの! だから力を貸して……『リトス』」

 途端仄かに光り、ジュエルは反応を示してみせた。

 あたしはもう一度、ゆっくりとはっきりと呼び掛ける。

「協力して……お願い! 『リトス=ヴェル=デリテリート』!!」

 辺りが一気にラヴェンダー色の光に包まれた──!!