ツパおばちゃんがパパの目前まで近寄り手を差し伸べた。パパを見上げるおばちゃんの紅い瞳と、見下ろすパパのラヴェンダーと黒曜の瞳。どちらの真剣な眼差しも揺るがずに合わさっていたけれど、刹那パパの表情が緩み、フッと笑って瞼を閉じた。

「ラヴェル……?」
「いつもはお見通しの君だけど、今回は逆転したね、ツパ。君に……ジュエルは渡せない」
「──!?」

 パパは再び瞼を開いて、静かに見守るビビ先生に目を向けた。そう、二人は、そしてあたしも気付いたんだ……ツパおばちゃんが嘘をついたことを!

 ──『僕』を首相にと推薦してくれたのは貴方でしょう?

 動揺すると昔の癖で、自分を『僕』と呼んでしまうツパおばちゃん。パパもビビ先生もそれに気付いた!!

「ラヴェル! どうか、どうかお願いします!!」
「ダメだよ、ツパ。サリファは私が倒す。ビビアンさん、全員を連れて退避してください」
「はい!」

 即座に返事をしたビビ先生は、まずはあたしの背後のカプセルに走り寄った。そうしている間にもパパは剣を抜き、その動きに呼応した赤い煙が生き物のように渦を巻き始めた──でも。

「ごめんなさい、パパ」
「──えっ!?」

 切っ先の前に立ちはだかる──慌てて剣を下げたパパの瞳を、真っ直ぐ貫くあたしの熱視線。