「……とりあえず、何よりです」

 今一度ツパおばちゃんへ振り返ろうとした矢先、出口方向から幾つかの足音が響いてきた。一人……二人? 狭い通路からあたし達のいる広場に現れたのは、ルクの言っていた通りビビ先生とアイガー、肩にピータンを乗せたパパだった!

「パパっ! 先生! アイガーにピータンも!!」

 あたしの喜ぶ声に、一旦はツパおばちゃんの元へ向かおうとしたパパが、あたしに気付いて駆け寄ってきた。その(おもて)はあたし達が無事だったことへの安堵と、今でも辺りに立ち込めている赤い光への警戒で、みんなと同様複雑な気持ちを描いている。

「リルっ!! 無事で良かった……! ツパも、アッシュもルクも……!!」
「うん、ゴメンね、心配掛けて……う、ふうぅ~!!」

 パパの両腕が一気に巻きついて、あたしはギュウッと抱き締められた。余りの力強さから変な吐息が零れたのに我に返ったパパは、慌ててあたしを解放し微妙な苦笑いを返した。ピータンも嬉しがるように、あたしの頬に飛びついてくる! ピータン、何ともなさそうだ……と見上げたパパの左眼には、ジュエルが変わらず収められていた。

『さぁて……主要メンバー勢揃いとなったか……ウルよ、いいかげんジュエルを渡してもらおう……』
「サリファ……っ!!」

 頭上に漂う煙みたいな赤い光が(うごめ)いて、サリファは激しい雲海の如くたなびいていた。

 人面のようなシルエットを(かたど)って、時には嘲笑う女性のように、時には怒り狂う男性のように……とうとう決着の時へと辿り着いたようだった──。