ルクの去った広い室内は、一人欠けたことで寂しく感じられた。沈黙の漂う空間にアッシュと二人きり。とは言え、サリファはいつ目覚めるか分からないのだ。早く本題に入らないといけないとは思いつつ、あたしの中では気まずさが渦巻いていた。

「リル、ごめんね」
「え?」

 そんな空気を破ってくれたのは、アッシュの謝罪だった。でも……どうして謝ったの? 一体何を謝っているの?

「ルクも僕も本来こんな状況で、こんな風にリルに気持ちを伝えたかった訳じゃなかった。特に僕は……一度諦めたのに撤回した情けない奴だからね……そんな僕からこんな形で言われても、リルだって困るのは分かっていたのに……本当に、ごめん」

 ──コツン。

 カプセルの中で直立したまま、アッシュは謝るように下げた頭を、壁面に触れさせ静止した。見えなくなった(おもて)は今どんな表情をしているのか……あたしには分からなかったけれど、自分で自分を(あざけ)っている気がした。

「……ううん。アッシュもルクも、あたしのこと、そんな風に大切に想ってくれているって知れて、本当に嬉しかったよ! あたしも二人のことは大好きだって思ってる! でも……あの……」
「ありがとう、リル。うん、大丈夫だよ……僕達の大好きとリルの大好きが、まだ一致するものではないことは分かっている。でもいつか……恋したいって思えた時、僕達も候補に入れてくれたら嬉しい」
「……うん。うん! あの、アッシュ……本当にありがとう!!」

 再びこちらを向き直したアッシュの笑顔は晴れやかに思えて、あたしの心にも柔らかい陽差しが降り注いだ気がした。