「「……分かった」」
「え?」

 あたしの願いに数秒置いて、応えた声が同時に二つ。それはもちろんアッシュと……そして、ルク、だった。

「ルヴィ、分かった……必ずジュエルをもらってくる! だからボクが戻るまで……必ず、約束して」
「約束?」

 そうお願いしたルクの面立ちは、いつになく落ち着いて見えた。

「ボクが戻るまで、ルヴィもアッシュも、絶対、無事でいるって」
「え、あ……うん!」

 慌てて返事をしたあたしに、ルクは一つ頷いて立ち上がった。次にアッシュに向けて大きく頷く。アッシュも言葉は発しなかったけれど、同じく首肯(しゅこう)したのを見て、ルクも大きく頷いた。

「ありがとう、ルク。ルクも絶対、無事に戻ってきてね!」
「うん、お互い約束だよ!」

 見送ろうと立ち上がった足が、布団にもつれてバランスを失った。よろけたあたしを咄嗟に支えたルクの腕は、力強くて温かくて……今までで一番たのもしく感じられた。

「ルク……分かってると思うけど、此処は王宮の東南の()だ。となれば南門を抜けるのが一番速いけれど、門番がいたら厄介だから……」
「そしたら南門から東へ三つ目の木の先を見て! 生け垣の下に小さな隙間があるの。あたしも通れるから、きっとルクも何とか行けるはず!」
「ラジャー! アッシュ、ルヴィ。それじゃ……サー・ルクアルノ、行ってきます!!」

 ルクは寝台から颯爽と飛び降りて、クルりとこちらを向き敬礼した。再び背を向けて、アッシュの「今だ!」という声に合わせ、灼光の薄らいだ穴をくぐり抜けた!

 まるで赤いトンネルを突き進むようなルクの後ろ姿は、今までに見たこともないほどの勇気と闘志に満ち溢れていた──!!