「いったぁぁぁぁぁいっっっ!!」

 狭い空間の中でもんどりを打った。一体何だったの!? いや……もしかして、夢見てた??

「大丈夫……リル?」

 扉が開かれたんだろう、足先から明かりが差し込み、心配そうな声が聞こえた。あれ? でもパパ、いつもよりちょっと声が高いんじゃない??

「う……うん~大丈夫。夢と現実がごっちゃになってたみたい……おはよーパパ。もうヴェルに着いたの?」

 あたしはズルズルと身体を押し出しながら、カプセルの扉の手前で挨拶をした。昨夜のように端に腰掛け眠気眼(ねむけまなこ)(こす)る。

「おはよう、リル。どんな夢だったの? でも……残念ながら、君のパパじゃないけどね」
「えっ?」

 あたしは慌てて正面に目を向けた。見えるニッコリ笑顔にはたと動きを止める。もう一度両目を擦り……今一度見詰めても、目の前の風景は変わらなかった。

「ア……アッシュ!?」
「おはよう、我が姫。目覚めは良くなかったみたいだけど……この再会が君にとって、良き出来事であることを願うよ」

 そう言ってアッシュは目元に寄せて固まったあたしの右手を取り、手の甲に優しくキスをした……って!? ちょ、ちょっと待って! 何でココにアッシュがいるのよ!? それも「我が」って「姫」って……益々「気障度」が上がってる!!

「ママはちゃんと起こしたんですからね~! ルヴィが起きないからこうなるんじゃない。アッシュに嫌われる前に、ちゃんと顔洗ってきなさい」

 あたしの目線に合わせ片膝を着いたアッシュの向こうで、お茶菓子を運びながらママがぼやいていた。そのまた先ではテーブルでお茶を(たしな)むパパの笑顔。